色彩の再現、光の性質
広本伸幸
絵を見る側の人間は、絵が支持体(キャンバス、パネル、紙など)と絵具(油絵具、アクリル絵具)から作られていることをあまり意識することなく絵を絵として眺める。しかし画家はそれらの物質の性質を知って、より優れた絵を生み出そうと苦闘しているのである。
「光の表現」といっても、光そのものを表現することは不可能だ。何かに光が当たり陰影が生じて光の存在あるいは現象が知覚される。その何か光の当たるものに固有色があれば色の表現が光と結びつく。
微妙な色彩の差異を見分ける人間の目は極めて精密なセンサーあるいはスキャナーといってもいい。音楽家の耳は複雑な和音、音程の高低、音色の変化などを聞き分けることができるし、絶対音感を持つ人も少なくない。絶対色感という言葉は使われないが、色彩画家と呼ばれる画家はおそらくそれに近い能力を備えていると思われる。
絵が描かれた場所と飾られる場所の光の違い(自然光、蛍光灯、白熱灯)によって、色の見え方も変わってくる。自然光も天候、時間、場所によって大きく変わる。蛍光灯ランプも種類によって様々だ。白熱灯もワット数によって赤みが違う。写真に詳しい人なら色温度という用語を知っている。現在最も優れた光源は紫外線防止フィルター付のハロゲンランプとされるが、使用時間によって変化する。
額のガラスは厚さによって青みがかって見える。アクリル板は完全に無色透明だが、無反射コーティングのものは角度によって紫あるいは緑に見える。
絵が展示される壁面が絵に使われている白より明るい白の場合、絵の白はくすんで見えるし、ベージュやアイボリー、グレーなどの壁であれば、絵の白が明るく鮮やかに見える。
光、壁、そして見る人間の心の明るさ、それら相対的な関係から絵は異なって見えてくる。
(@Gallery TAGBOAT Art Director)





