富岡直子 生命ある光と色彩
広本伸幸
なんて綺麗な色! 絵が好きな人はもちろん、それほど美術に興味のない人であっても、この作品を前にすると驚きの声をあげる。スカーフやドレスにして身に纏いたいと思う女性もあるだろう。
色は光によって現れる、当たり前だけれど暗闇では色は感じ取れない。色は物質や現象の性質の一つと言ってしまうと味気ないが、色気、顔色、音色、遜色、言葉だけとってみても様々な色が私たちの生活を文字通り彩っている。
色を美しく見せるには土台の白が重要。画家のこだわりはこの下地の白を作るところから始まる。角材で補強した合板製のパネルに綿布をしっかり張りこみ、ジェッソ(石膏)を塗って乾いてからサンドペーパーで磨いていく、正確にはグラインダーで研磨していく。
その硬い白の上に広がる透明かつ鮮やかな色彩の乱舞を想像しながら。
曇りやよどみのない色彩の塗り重ねには、失敗は許されない。普通の油絵のように塗り重ねて修正することができないのだ。真剣勝負。そのためには予め描かれるイメージが頭の中に出来上がっていなければならない。他人には見えないそのイメージが絵になる不思議。
絵は英語ではpaintingつまり絵具(paint)を塗りたくったもの。ペンキのこともpaintだから、ペンキ塗りもpainting。
日本語の絵の語源は「一切の物の形を得てわが物とすることからエという」(本朝辞源) 形ある色がイメージとして立ち上がり、画家の目には見えてくる。これだ!得たイメージを寸分違わず白の上に再現しようと絵具が塗られ始め、迷うことなく完成に至る。
画家は自分の生命を一枚の絵に賭けている。しかしその苦闘の跡など感じさせることなく、爽やかな空気が通う光と色彩が目の前にある。
(@Gallery TAGBOAT Art Director)





